会社が成長して従業員が増えるのは嬉しいこと。ただ、従業員数が50人に達すると、産業保健の義務が一気に発生します。いわゆる「50人の壁」です。「知らなかった」では済まされない法律上の義務ばかりですが、直前まで気づかず慌てる会社が少なくありません。この記事では、50人で何が変わるのか、いつまでに何をすればいいのかを、産業保健師の視点で整理します。
「50人」で何が変わるのか──義務の一覧
労働安全衛生法では、常時50人以上の労働者を使用する事業場に対して、次の義務を課しています。
| 義務 | 内容 | ポイント |
|---|---|---|
| 産業医の選任 | 医師の中から産業医を選び、労働者の健康管理等を行わせる | 事由発生から14日以内に選任し、労働基準監督署に届出 |
| 衛生管理者の選任 | 衛生管理者免許等を持つ人を社内から選任 | こちらも14日以内+届出。外部委託は不可(社内の人) |
| 衛生委員会の設置 | 労使で健康・衛生について調査審議する場 | 毎月1回以上開催。議事録は3年保存 |
| ストレスチェック | 年1回、全労働者に実施 | 結果は労働基準監督署へ報告義務あり |
| 健診結果の報告 | 定期健康診断の結果を報告 | 健診の実施自体は人数に関係なく義務。50人以上は報告書提出が加わる |
※ 業種・作業内容によっては、これ以外の義務(安全管理者・安全委員会など)が加わる場合があります。
「50人」の数え方、間違えていませんか
ここでつまずく会社が多いので、先に確認しておきましょう。
- 会社全体ではなく「事業場ごと」に数えます。本社30人+工場60人なら、義務が発生するのは工場です。
- パート・アルバイトも含みます。「常時使用する労働者」なので、週数日の勤務でも継続して雇っていれば頭数に入ります。
- 繁忙期だけ一時的に超える場合など、判断に迷うケースは労働基準監督署や専門家に確認を。
注意:産業医の選任や報告を怠ると罰則(罰金)の対象になり得ます。ただ、それ以上に痛いのは、労災や訴訟が起きたときに「体制を整えていなかった会社」として安全配慮義務違反を問われるリスクです。義務の履行は、会社を守る備えでもあります。
50人が見えてきたら──準備の流れ
おすすめは、45人前後になった時点で準備を始めることです。おおよそ次の順番で進めます。
- 事業場ごとの人数を確認するパート・アルバイトを含めた「常時使用する労働者」を事業場単位で数え、いつ50人に達しそうかを見立てます。
- 産業医を探す地域の医師会・健診機関の紹介、産業医紹介サービスなどが窓口です。嘱託産業医の場合、費用は規模や訪問頻度によりますが月数万円程度から。選任したら14日以内に届出します。
- 衛生管理者を育てる社内の人が衛生管理者免許を取る必要があります。試験は毎月ありますが、準備に数か月かかるので、ここがいちばんの先行投資です。
- 衛生委員会を立ち上げるメンバー構成(議長+労使半々)を決め、月1回の開催サイクルと議題の型をつくります。形骸化させない設計がカギです。
- ストレスチェックの実施体制をつくる実施者(医師・保健師等)と実施事務従事者を決め、外部機関を使うかどうかを検討。実施後は労基署への報告まで忘れずに。
中小企業がつまずきやすいところ
制度は分かっても、実際には「産業医は選任したが名前だけ」「衛生委員会が雑談で終わる」「ストレスチェックはやりっぱなし」という“形だけ50人対応”になりがちです。せっかくコストをかけるなら、健診結果の活用や職場改善につながる「動く仕組み」にしたいところ。そこには産業保健の実務経験が効いてきます。
genba oh の考え方
genba oh は、産業保健体制をゼロから構築してきた産業保健師の実務経験をベースに、50人対応を「義務の消化」で終わらせず、離職・休職を減らす仕組みづくりまで伴走します。複数拠点・テレワーク混在でも、オンラインで対応できます。
あわせて読みたい:中小企業の産業保健、何から始めればいい? / ストレスチェックの集団分析、活用できていますか?
50人の壁、一緒に越えませんか。
「もうすぐ50人になる」「もう超えているが何も整っていない」——どちらの段階でも大丈夫です。現状をうかがって、優先順位をつけた進め方を産業保健師がご提案します。
ご相談は無料です。